男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
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ここはモンテクレール大公国の城下街。
南の大通りの中心は広場のようになっていて、そこに街のシンボルのような白亜の大聖堂が建っている。
高い鐘楼の大きな鐘は、初夏の眩しい日差しを反射させ、青く澄み渡る空に、美しい鐘の音を響かせていた。
今日はアミルカーレ・ド・モンテクレール大公殿下の婚礼の日。
結婚しないことで男色家の噂もあった殿下が、ついにお妃様を迎えるのだ。
聖堂から真っすぐに伸びる大通りには、馬車が一台通れるだけの道幅を残し、都中から民が集まっている。
皆、お妃様の顔をまだ見たことがない。
ひと目、見てみたいと思う街人が大勢、押し寄せていた。
聖堂の中では婚礼の儀が進行中だと思われるが、列席を許されているのは貴族や有力者のみ。
一般庶民は中に入れてもらえない。
席には限りがあるから、当たり前かもしれないが……。
聖堂の扉が開くのを、まだかまだかと待っている群衆の中には、老舗の服の仕立屋の息子で、五歳のアベルもいた。