男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
これといった特産もない、小麦と芋畑からの収益が少々といった領地を持つ、落ちぶれた田舎貴族の娘を誰も欲しがらないでしょう。
成金で見栄っ張りの商人からだったら、私を嫁にという申し入れがあったのに、それを蹴ったのは父。
落ちぶれても変なプライドがあるから、爵位のない家に娘をやるのが惜しいようだ。
父はまだガミガミと叱り続けていて、皿の上のパンは半分ほどしか減っていない。
私はおかわりのパンを食べ終えて、「お嬢様、もう一枚召し上がりますか?」と笑顔を向けるニーナに、「もういいわ」と答えて席を立った。
「こら、ステファニー、どこへ行く!
まだ話は終わっておらん。座りなさい」
同じ話を、まだ繰り返すつもりなのか。
そんな暇があるなら、どうしたらこの領地が潤うのかを考えればいいのに。
父への呆れと、田舎貴族という身の上にうんざりしている私は、いい機会だからと、自分の考えをハッキリと口にする。
「お父様、私はどこにも嫁ぐ気はないので、女らしくする必要もないんです」
「な、なにを言う。お前がよい家柄に嫁いで、フォーレル家に援助しなければ、うちはこのままだぞ? 落ちぶれ貴族などと言われ続けてよいというのか?」
「まぁ、落ちぶれ貴族だなんて、お父様ったら。
お兄様がいらっしゃるじゃありませんか。お父様とお兄様で、この地を豊かにすればいいと思いますわ」