男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
お仕置きという言葉からは、それほどの厳しさを感じないので、その点に関しては胸を撫で下ろす。
しかしこの格好は恥ずかしく、顔が熱くなり、鼓動が速度を上げて慌てていた。
大公殿下は私を担いだまま狭く薄暗い路地をズンズンと進んで行き、後ろについて歩くクロードさんはクスクスと笑うばかりで、殿下を止めてくれなかった。
路地を抜けると、また明るい日差しの中に出る。
長閑だった街の中は、騎士や大公殿下までもがやって来たことで、野次馬が集まり、騒めいていた。
どうやら乗ってきた馬を、平民の若い男に預けていたようで、「退いてくれ」という男の声で野次馬たちが道を開けると、立派な馬が二頭、手綱を引かれて道の真ん中に姿を現した。
そこでやっと私は肩から降ろされた。
クロードさんは馬を預けていた男に銀貨を渡してから、茶色の馬の背に乗る。
私は殿下に「乗れ」と命じられて、黒毛の馬の立派な鞍の上に跨った。
すぐさま大公殿下も、私の後ろに乗ってきて……。
手綱を握るのは大公殿下。
私は殿下の胸に背中を抱かれるようにして、馬の背に揺られ、ゆっくりと城へと繋がる坂道を上っていく。
近すぎる距離に緊張しながらも、「先程は助けていただき、ありがとうございました」と、言いそびれていた感謝を口にすると、呆れの溜息が耳を掠めた。