男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

「ジャコブの知らせがなければ、お前は奴らに捕まっていたぞ。帰ったら、ジャコブにも礼を言っとけ」

「え?」


大公殿下は私を助けるまでに至る経過を、説明してくれた。

掃除道具を持って私の部屋を出たジャコブは、あの後、自習しているはずの私のために、紅茶を淹れて持ってきてくれたそうだ。

しかし、部屋に私の姿はなく、ベッドには着ていた服が脱ぎ捨てられ、代わりにキャビネットの中にあった一番地味な服が消えている。

これは勝手にひとりで城を抜け出したに違いないと、北側の門番に聞きに行けば、『そういえば、金色の髪の可愛い少年が出て行ったような……』と言われたそうだ。


その頃、大公殿下は公務でまさに出かけようとしていたところ。

屋敷の玄関でジャコブからの知らせを聞いて、すぐさま青の騎士団、二十名ほどを捜索に出し、自らも公務を中止して街に探しに出てくれたということだ。


午餐の鐘がなるまで、ちょっとだけ城下街を探険するつもでいたのに、まさかそんな大事になっていたなんて……。

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