男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました


「申し訳ありませんでした」と力なく謝ると、耳元に「全くだ」という不機嫌そうな声がする。


「ステファン、この城にいる間のお前の保護者は、この俺だ。
お前を成長させて、三年後に立派な姿で返せなければ、フォーレル伯爵に申し訳が立たない。
規則があるのは、お前を守るためなんだ。頼むから、勝手に行動してくれるな」

「はい……」


規則って、教育を受けに来た貴族の子供を守るためにあったんだ。

つまらないと不満に思って、申し訳ない……。

思慮不足を反省して、肩を落として落ち込む私。

すると、それまでと違った、幾らか機嫌のよさそうな声色で、大公殿下が言葉を付け足した。


「叱るばかりでなく、礼も言わねばならんな」

「礼、ですか?」

「お前のお陰で、ボゾネ一味の頭を捕らえることができた。奴らは……」


大公殿下の話によると、私を捕まえて売り飛ばそうとした男たちは、ボゾネ一味と呼ばれているらしい。

麻薬の密売を主な生業とし、他にも窃盗、詐欺、人身売買など、悪事の限りを尽くすゴロツキ集団だ。


今までボゾネ一味の犯罪人を、幾度となく捕らえて牢にぶち込んではいるが、それは所詮トカゲの尻尾切り。

親玉を捕らえぬ限り組織は消滅せず、新しい尻尾もすぐに生えてくるので、青の騎士団は手を焼いていたらしい。

それが私のお陰で、やっと解決しそうだということで。

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