男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「まさか、城の近くに潜伏していたとはな。灯台下暗しということか」と大公殿下は言って、自嘲気味に笑った。
話を聞き終えた私の心は、落ち込みから一転、急浮上。
「そうだったんですか! じゃあ、僕はお役に立てたんですね」と興奮気味に言ったら、「調子に乗るな」と叱られた。
「全く、お前は……。
ジャコブから、天真爛漫で無邪気で元気な少年だと報告を受けていたが、それに無鉄砲を加えたほうがいいな」
大公殿下の呆れの溜息がうなじに掛かり、くすぐったくて首をすくめて考える。
私は無鉄砲なのだろうか?
私としては剣さえあれば、あの場をひとりでも切り抜けられたんじゃないかと思っている。
だから懲りずに、ひと月後の外出解禁となった暁には、またひとりで街に行くつもり。城外での帯剣のお許しをいただいて……。
今、そんなことを言えば反省がないと思われそうなので、口には出さない。
心の中で『剣さえあれば大丈夫なのに』と言い返していたら、馬は城に帰り着いていた。