男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

殿下のマントを腕にかけて持つクロードさんは、ドア前に立ったままの私にゆっくりと近づいてきた。

私の疑問は顔に表れていたのか、彼はニッコリと笑って答えてくれる。


「ステファン様の前では隠す必要がないと思いまして。どうしてでしょうね?
あなたがいると、アミルが笑ってくれるからでしょうか。昔のように……」

「え?」


そういえば昨日もクロードさんに、大公殿下が久しぶりに声を上げて笑ったというようなことを言われた気がする。

私がいると、殿下が笑う。
それは……都会慣れしてない田舎者が珍しくて面白いから、とか?

クロードさんの言いたいことが上手く理解できずにいたが、彼はそれ以上の説明を与えてくれず、「お食事の用意をして参ります」と部屋を出て行ってしまった。


パタンと閉められたドアに振り向いていたら、「いつまでそこに突っ立っているつもりだ。こっちに来い」と殿下に呼ばれた。

ふたりきりの執務室に、一度緩んだ緊張が戻ってくる。

奥のテーブルセットへと近づいていき、「失礼します」とテーブルを挟んだ向かいの椅子に座ろうとしたら、「違う、こっちだ」と言われて、殿下の座る長椅子の左隣の座面を叩かれた。


なんで隣に……?


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