男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
双子の兄とはそっくりで、幼いときにはよく間違えられていた。
さすがに今は身長も違うし、家を出る少し前まで私の髪は腰まであったから、間違われることはなかったけれど、それでも顔はそっくりだと言われ続けていた。
兄は逞しさや男らしさが欠如した人なので、尚のこと。
だから、胸さえ潰せばごまかせると思っていたのに、それは浅はかな計画だったのだろうか?
大公殿下に女だとバレたら、一巻の終わりだ……。
焦りながらも「僕は男です」と否定すると、「それは分かっている」と大公殿下は少し笑った。
私の肩を抱いている殿下の左手が、筋肉の付き具合を確かめるかのように、肩や腕に触れて上下する。
右手は顎からやっと離れてくれたと思ったら、突然拳で胸を軽く押してきた。
叫びそうになるのを辛うじて堪えて、体を固くしていたら、「胸板は思ったより厚いな。それに比べて肩や腕の筋肉は細い。鍛え方に偏りがあるんじゃないのか?」と真面目に心配された。
体をカチンコチンに強張らせて、私は返事をすることもできずにいた。
教育に来るのは爵位を継ぐ男子だけだという先入観があるためか、女みたいな顔だと言われても、殿下の心にはそれを疑う気持ちはないようだ。
それについては安堵したいところだが、鼓動は速まるばかり。