男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

クロードさんはワゴンに食事を乗せてきていた。

すぐにテーブル上に、三人分の食事がセットされる。


メニューは羊肉とジャガイモのニョッキをトマトソースで煮込んだものと、焼き立てのライ麦パン。

それと魚の煮汁をゼラチンで固めたアスピック。

デザートはカリンの甘露煮だ。


私はそのまま長椅子で。

ひとりがけの椅子には大公殿下とクロードさんが座り、三人での食事が始まった。


食べながら「さっきのは冗談だ。間に受けるなよ」と大公殿下が念を押すように私に言い、

クロードさんが私にも分かるように、女嫌いという噂について教えてくれた。


「有力貴族たちが我が娘を花嫁候補にと、招待状を寄越したり、謁見を願い出て来城するのですが……」


モンテクレール家の直轄領の隣には、ビーンシュトックという侯爵の領地がある。

そのビーンシュトック家から晩餐会に招かれ、行かねばならなかったとき、隣の席に侯爵家の御令嬢が座ると、殿下はあからさまに嫌そうな顔をして立ち上がったそうだ。

こういう場では男女が交互に座るのが決まりであるのに、反対側に座る侯爵夫人に無理やり席を代わるよう要求し、おかしな席順に。

結局、侯爵家の御令嬢とはひと言も言葉を交わすことなく晩餐会が終わったとか。


またあるときに招待された舞踏会では、有力貴族たちが次々と『我が娘とダンスを一曲』と言って殿下の御前に足を運ぶも、殿下はことごとく拒否。

しかし、大公家の次に力のあるバルドン公爵の娘、エリーヌ嬢だけは、邪険に扱うわけにいかなかった。

渋々エリーヌ嬢と一曲だけ踊った殿下だが、その後は椅子を寄せて話しかける彼女を無視し続けて、ついには泣かせてしまったとか……。


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