男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
私も一応貴族の御令嬢なのに、大公殿下の女性を嫌がる気持ちが理解できてしまった。
フォークを休めることなく、うんうんと頷いて納得していたら、クロードさんが口を挟む。
「嫌でも我慢して話してよ。いい加減に結婚してくれないと、後継が……」
皿の上に溜息をこぼしたクロードさんは、ほとほと困ったといった顔をしている。
それを見て、国家の安定のためには後継が必要だという執事長の心配も分かり、私は両者に同情を寄せることとなった。
大公家って大変なんだね。私は田舎貴族でよかったかも……。
話が嫌な方向へ流れたためか、「そんなことより、ステファン」と、大公殿下が私に話を振ってきた。
カリンの甘露煮の贅沢な甘さを楽しんでいる最中だったので、「はい、とても美味しいです」と答えたら、「料理の感想は聞いてない」と笑われた。
「お前、剣の腕が立つようだな。ボゾネ一味に食らわした一撃は、なかなかのものだった。剣術は誰に教わった?」
ボゾネ一味に襲われて、絶体絶命のピンチに陥ったときに、青の騎士団に救われた。
ふたりの騎士は私を庇いつつ戦ってくれたが、私だって戦えるのにと思い、隙を狙って騎士の陰から飛び出し、火かき棒で下っ端の肩をひと突きした。
あの様子をどうやら殿下は、見ていたらしい。