男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
クロードさんはなにも答えずに立ち上がって、壁際へ。
なにをするのかと目で追っていたら、模様に見えた壁の装飾に指をかけて引っ張ると、隠し扉が開いた。
そこには武器が取り出しやすい形でしまわれていて、ひと振りの剣を手にしたクロードさんが戻ってきて、私の横に立った。
私の手の中の剣と、今持ってきた剣を取り替えられる。
「こちらの方が扱いやすいかと。殿下の愛剣は、ステファン様には重く長すぎます」
さっきクロードさんが渋い顔をしていた理由は、剣を与えたことについてではなく、重量とサイズが合っていないことについてだったみたい。
確かにこっちの軽くて程よい長さの剣の方が、私には扱いやすそう。
大公殿下も「そうだな」と納得して、クロードさんの手から受け取った剣を、腰に戻していた。
鞘には同じように獅子の紋章が刻まれて、美しい装飾の施された剣。
それを手にしている私の中には、戸惑いに代わって喜びが強く湧き出していた。
立派な鞘よりも、早く刀身を見てみたいというウズウズした気持ちになる。
それはどうやら顔に表れていたようで、「いいぞ、抜いてみろ」とお許しをいただいた。
「ありがとうございます!」と立ち上がり、テーブルから離れた窓際で剣を抜く。
窓から差し込む日差しに、磨き抜かれた刀身がキラリと輝き、その眩しさに目を細めた。
「わぁ……綺麗……」