男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
うーん?
右に傾けていた首を、今度は左に傾ける私。
ジャコブの評価を上げるような出来事がなにかあっただろうかと考えてみても、思い当たらず、なにを勘違いしているのだろうと不思議に思って聞いていた。
それでも、いつも必要なことしか口にしないジャコブが、今朝はたくさん会話してくれるのが嬉しかったから、「これからもよろしく!」と満面の笑顔で言葉を返した。
ジャコブが部屋を出ていってから着替えをし、その後は三階の北側にある餐の間へ。
ここは私たち教育中のお坊ちゃんたちが、三度の食事を一緒に取る部屋だ。
豪華な調度品に囲まれて、天井には見事なシャンデリア。
大きなテーブルは十人がけで、他の四人のお坊ちゃんたちが揃っている中で、新参者の私は一番端の椅子に着席しようとした。
するとエドガーに「ステファン殿は、どうか真ん中の席にお座り下さい」と無理やり席を替えられた。
エドガーは十三歳のまだあどけなさの残る顔立ちをした少年だ。
しかし、後半年ほどで教育期間を終えようとしている先輩でもあり、侯爵家という高い身分も相まって、初めて会ったときには生意気な印象だった。
それが今ではすっかり懐かれて、少々困っていた。
こんな風に立てられることに慣れていないから、どう対応していいものか……。