男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
それは大公殿下の女嫌いという噂についての話。
確かビーンシュトック家の晩餐に招待されたとき、そこの御令嬢が隣に座ると、大公殿下は不機嫌さを露わにしたとか。
今、思い出したが、ビーンシュトック侯爵家はエドガーの家だ。
ということは、エドガーのお姉さんが大公殿下に振られたということで。
エドガーは性格に少々扱い難い面があるけど、幼さの残る可愛らしい顔立ちをしている。
きっとお姉さんも可愛らしいのではないかと思うのに、殿下の好みではなかったのか。
私がその話を聞いていることを、もちろんエドガーは知らない。
しかし、彼の方から話を振ってきた。
「実は姉が落ち込んでおりまして。なんとかして大公殿下のお側に近寄りたいとの思いが……。
剣を賜るほど、殿下に気に入ってもらえるステファン殿なら……」
とても回りくどい話し方をしているが、エドガーの話を簡単にまとめると、こんなこと。
お姉さんが花嫁候補となれるよう、殿下のお気に入りの私に、間に入ってもらえないかというお願いだ。
ゆで卵の殻をスプーンの背でコンコンと割って塩を振り、中のトロリとした黄身を味わいつつ、「無理だよ」とエドガーの頼みを断った。