男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
「ステファン殿、そんなこと言わずにお願いします」
「あのね、エドガー。なにかを勘違いしているようだけど、僕は大公殿下のお気に入りじゃないよ。城に来てまだ日も浅いのに、どうやったらお気に入りになれるのさ。四日前に会話して以降、今日までお会いしてもいないよ」
キッパリはっきりそう言うと、「そうですか……」と意気消沈する、幼さの残る顔。
フォークまで置いて食事を残そうとするから、仕方なく「アドバイスならできるけど」と話を膨らませてみた。
パッと顔を上げて私を見る彼の目には、期待が。
大公殿下は確か、『女はくだらない長話をするから嫌なんだ』と言っていた。
だからその逆の女性像を教えてあげた。
「殿下の好みの女性は、口数の少ない人だよ。
お抱えの画家や音楽家がどうとか、このドレスと宝石はどこそこの物でとか、自慢話はきっとダメ。なにも話さずに黙っていればいいと思う」
「え? そうなんですか?
しかし、なにも話さないで終われば、記憶に留めてさえ、もらえないかと……」
「ん? んー、それもそうだね」
確かにエドガーの言う通りだった。
黙ったままでは嫌われずに済んでも、好かれて花嫁候補ともいかないだろう。