男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
裸になるからもちろん部屋にはしっかりと鍵をかけ、ジャコブにも外に出ていてもらう。
貴族の沐浴は、使用人に全身を洗ってもらうのが当たり前で、私も実家にいるときはメイドのニーナに洗ってもらっていた。
しかしここでは性別をごまかしているのでメイドに頼めず、『お手伝いを』というジャコブの申し出も初日に断っている。
『うちは貧乏だから全部自分でやってたよ。それが当たり前で、恥ずかしから、ひとりがいい』
そう言うとジャコブは疑問に思わずすんなりと引き下がってくれたので、それについては貧乏な田舎貴族でよかったと感じていた。
綺麗さっぱり汗を流した後は、また布帯で胸をきつく巻いて潰し、新しいブラウスとズボンを身に纏う。
ベッドに腰掛けて髪を拭き、櫛を通していたら、ノックの音がした。
私の部屋を訪れるのはジャコブしかいないので、誰かと問うこともなく、立ち上がって鍵を開ける。
入ってきたのはやっぱりジャコブで、その理由は沐浴の後片付けと、晩餐の準備ができた知らせだろうと予想していた。
しかしジャコブは「アクシデントがありまして」と困った顔して話し出す。