男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
笑いながらそう言われたバルドン公爵は、二階に向けて鼻息荒く言い返す。
「これが遊んでいるように見えるのですか!?」
「見えるぞ。童心に返って鬼ごっこをしているようにな」
「なっ……」
殿下は本気でそう思ったのではなく、からかっているような口振りだった。
涼しげな目元は弓なりに、口の端をニッと吊り上げて。
それを見たバルドン公爵は、顔を真っ赤にして怒り出した。
「こやつの剣を、取り返そうとしているのですよ!」
「それは俺がステファンに与えたものだ」
「知っております。愚かな真似を……。こんな田舎貴族に剣をくれてやるなど、殿下の気まぐれには困ったものですな」
ふたりのやり取りにハラハラしつつも、風に揺れる銀色の髪に、目が奪われる。
このお方は、いつどこで、なにをしていても美しい……。
こんなときに見とれて警戒心を解く私。
するとバルドン公爵の太い腕が伸びてきて、剣の鞘を握られた。強制的に取り上げる気のようだ。
「バルドン公爵、それだけはお許しを!」