男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました

取られまいと慌てて剣を押さえる私と、「ええい、抵抗するな。渡さんか!」と力尽くで奪おうとする公爵。

すると殿下が急に、声の調子を低く鋭く変えた。


「叔父上、やめろ。
それ以上の蛮行は許さんぞ」


「ば、蛮行ですと!?」


「ステファンは、フォーレル家から預かっている大事な客人だ。俺の客にこれ以上の無礼を働くなら、いくら叔父上といえども、処罰せねばならない。俺の臣下にいる身であることを忘れるな」


厳しく叱責した大公殿下は、青い瞳を狭め、射るような鋭い視線を公爵に向けていた。

「くっ」と悔しそうに呻いて、言い返す言葉を失ったバルドン公爵は、私の剣の鞘からやっと手を離す。


「なぜ、こやつを特別扱いする……」


そう言って私をジロリと睨みつけ、「弟の代わりか?」と、殿下まで届かないような小声で呟いた。


弟……?

大公殿下に弟君がいるとは初耳だ。

この屋敷にお住まいなのだろうか?と興味を引かれたが、バルドン公爵はそれ以上なにも言わず、ドスドスと足を踏みならして中庭から出て行った。

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