男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
その姿が見えなくなり、ホッと胸を撫で下ろす。
よかった……のかな?
大公殿下のお陰で剣を奪われずに済んだが、これで完全に目をつけられたような気がする。
気を緩めていられる状況じゃないのかも。
バルドン公爵は殿下の政務を補佐しているのか、はたまた別の用事があるのか分からないが、頻繁にこの屋敷に出入りしているようだし、次に顔を合わせるときが少し怖い。
そんな不安を抱えて、公爵が出て行った東の扉を見つめていたら、「ステファン」と穏やかな声で上から呼びかけられた。
「叔父上が、すまなかったな」
「いえ、そんなことは……。助けて下さってありがとうございました」
「暇なら上がって来い。話をしよう。
執務室で待っている」
「はい!」
窓が閉められ、そのお姿が見えなくなると、私は走って中庭から出て、螺旋階段で二階へ。
四日振りに話ができる機会を喜び、胸を高鳴らせて執務室のドアをノックした。
「入れ」と声がして、真鍮のドアノブを回して扉を開ける。
「失礼します」
扉を閉めて室内を見回したら、今日はクロードさんの姿がなく、大公殿下がおひとりで、部屋の中央にドンと構える執務机に向かっていた。