男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
机の上には書類の山。
左の山の上の一枚を取って一読してサインをし、右の山に積み上げていた。
ドア前に立ったまま声をかけられるのを待っていると、羽ペンを置いた殿下が、「来い」と私を呼んだ。
執務机の前まで進み、頭を下げる。
すると「そうかしこまるな。この前のようにはしゃげばいい」と笑って無礼を許可してくれる。
革張りの立派な椅子にゆったりと座る殿下は、肘掛に両手をかけて、長い足を組み、涼しげな瞳を細めて私を見る。
「先程、ジェフロアから授業の報告を受けたぞ。
華奢な体で人一倍の体力と根性があり、飲み込みが早いと。
今すぐ見習い騎士として入団させたいくらいだとも言っていたな」
ジェフロアさんが、そんなことを!?
剣術の授業中も直接褒めてもらえたけど、見習い騎士として入団させたいと思ってくれたなんて……私にとって、これ以上ない褒め言葉に驚かされた。
嬉しくなった私はテンションが上がり、「僕も入団の意思があります! どうすれば青の騎士になれますか?」とその場に飛び跳ねて言った。
しかし「落ち着け」と言われ、「教育期間中は無理だ」と苦笑いされる。
「お前はフォーレル伯爵家の跡取りだろう。
教育期間が終わっても、残って城のために働けば家はどうするんだ?」