男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
それは……。
上がったテンションが急降下。
家を継ぐのは兄であって、私ではない。
だからそれを理由に青の騎士団に入団できないわけじゃないんだけど、説明できずに黙って頷くしかなかった。
せっかくのチャンスを逃した気分で、ガッカリしてしまう。
肩を落としてうなだれていたら、革張りの椅子が軋む音がして、殿下が立ち上がった。
執務机を回って私のすぐ横に立ち止まるので、俯いていた顔を上げる。
すると、大きな手の平で頬を包むように挟まれるから、心臓が跳ねて目を丸くした。
青い視線が私の顔に、髪に彷徨う。
こんな私でも一応、年頃の女なので、男性である大公殿下に顔を触られては、恥ずかしさに顔が熱くなった。
しかし、照れている場合ではないと気づき、体を固くする。
四日前に否定された男色家疑惑が再び頭をもたげ、ゴクリと唾を飲み込んだ後に、恐る恐る聞いてみた。
「あ、あの、今日はクロードさんは……」
四日前、長椅子に押し倒されたとき、殿下の行いを止めてくれたのはクロードさんだった。
だから今日も、後から現れて、この冷や汗ものの展開を打開してくれるのではないかと期待したのだが……。
殿下は私の頬の感触を楽しむかのように撫でながら言う。
「クロードは書簡を持たせて隣国に使いに出している。三日は戻らない」