男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
髪とうなじに触れられて、また頬を赤らめながら、マシと言われた意味について考える。
髪を下ろしている姿は、おかしいのだろうか?
実家では剣を振り回しているとき以外は、長い髪を下ろしていることが多かったので、そんな自分の姿に違和感を覚えたことはない。
しかし、殿下の目にはみっともない姿に映ったのだろうか?
そう解釈して心配していたが、どうやら違うようだ。
結いおえた殿下は、私の肩を掴んでクルリと反転させる。
再び近すぎる距離で向かい合わせになり、緊張しながらその顔を見上げると、殿下の形のよい口元に笑みが広がった。
「これでいいだろう。お前は随分と可愛い顔をしてるからな。女に間違われて、襲われては困る」
襲われる……?
殿下の話によると、過去に一度、この屋敷内で若いメイドが襲われる事件があったそうだ。
犯人の使用人の男は厳しい処分を受け、もうこの城にはいないそうだが、ここは何百人もの使用人が出入りしている屋敷なので、二度と類似事件が起こらないとは言えないらしい。
それを心配した殿下は、私が女に見えないようにと髪を結んでくれたみたい。