男装した伯爵令嬢ですが、大公殿下にプロポーズされました
ピンクのバラが咲き乱れ
◇◇◇
それから三日後のこと。
今日の授業を終えた私は、自室に戻ってきたところだった。
ベッドにドサリと身を投げ出し、仰向けに寝そべる私を見て、ジャコブが心配そうにする。
「お疲れですか? それとも、ご気分がすぐれないのですか?」
「ううん、大丈夫。元気だよ。ちょっと考え事してたら、モヤモヤしちゃって……」
この前の執務室で、黒い棒タイを握りしめていた殿下の姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
弟君がいるのかと、私が聞いた途端に、殿下の態度は急変した。
不愉快そうな、苦しそうな、そんな顔をしていたように思う。
もしや弟君は亡くなられているのだろうか?という疑問を抱えて自室に戻った三日前、すぐにジャコブに確認してみた。
『大公殿下のお身内で、最近亡くなられた方っている?』と。
ジャコブの答えは『いませんが……どうかしましたか?』というものだった。
それならば、私の推測は間違いだったということで、黒い棒タイの意味も喪に服しているからということではないのだろう。
じゃあ、やっぱり大公殿下は、詮索するような発言をした私に対し、不愉快になったということで……。