all mine
「げっ。相変わらず、おせっかい体質」
「世話焼きっつー意味なら、そうだろうよ。でなきゃ、だれがデートの代打になんかなるかって話だよ。大体さぁ何やってんの? お前。うまくいってんじゃなかったのかよ」

私は答えに窮して、食べやすい大きさにカットされたヒレ肉を頬張った。

「……あ。うまっ」

思わず漏らした感想に、颯哉は苦笑した。私が回答を遅らせるためだけにステーキ肉を口にしたと、分かってる証拠だ。

「だろ? 俺もたまにうまい肉、食いたくなるんだよな」
「やっぱりデートでこういうところ来るわけ? 商社の高給取りは違うね」
「そりゃ、まぁ。って、俺のことはいいんだよ。俺が聞きたいのは、兄貴とお前のことだよ」

兄貴と言われて心のなかで、うっ、と呻いた。ちょっと話を振ったくらいじゃ彼の追求の矛先は変わらない。

そう。
私が付き合っているのはこの男の四つ上の兄、潤哉(じゅんや)さんなのだ。

颯哉とは対照的なくらいに穏やかな潤哉さんは、一緒に遊ぶというよりも私と颯哉の喧嘩を仲裁してくれたり、何かに迷ったときはアドバイスをくれるような、頼れるひとだった。

そんな彼に一大決心の告白をして付き合い始めて、ようやく半年。順調なはずだった。少なくとも、今までは。

「うまくいくもなにも、この二ヶ月間、ほとんど会ってないんだもん。今日もほら、この通り」
< 3 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop