all mine
それでも、潤哉さんが遠い知らない土地に行ってしまうと知ったら、自分のなかにくすぶっていた想いをもう隠すことなんてできなかった。

だから玉砕覚悟で『ずっとずっと好きだった』と告げたのだ。

『ありがとう。でも、俺でいいの?』と驚きを隠さなかった潤哉さんは、私の想いにまったく気が付いていなかったようで。あまりにあっさりと告白を受け入れられて、こちらが拍子抜けしたほどだ。

潤哉さんの出張中、毎日のようにメールを送ったし、週に何度かは電話でのやりとりもした。

それでも足りなくなると、月に一度くらいの間隔で泊りがけのデートもした。潤哉さんはせっかくだから、と大阪や京都のホテルを予約してくれて、プチ観光気分も味わった。

お互いの仕事の話や家族の話、思い出話に至るまで、この半年で一生分くらいの会話をしてしまったのかもしれない。

「私、うるさくしすぎたのかな」
「樹希がうるさいのはもとからじゃね? ってか、どういう意味で?」

颯哉はニヤニヤしながら、牛肉をステーキソースに浸す。

「ちょっと。肉が美味しいからって、颯哉ったらニヤケすぎでしょ。真面目に答えてるのに」
「……なんで兄貴のことになると、そんなにまどろっこしくなるんだよ。なんでもスパンスパンぶった切る勢いがお前の持ち味なのに。今日も絶対来いって兄貴に言えば良かったんじゃねえの? 来なかったら、お前なんて知らないって勢いでさ」

……この男に私の心の機微なんてわかってたまるか。
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