all mine
「あー、それともあれか。片想いが長すぎて『付き合ってるのが夢みたい~』ってなってんの? もしかして」
「なってないっ」

私は鉄板の熱であたたまったワインを口にする。
ワインの渋みが薄れたように感じるのは気のせい? それとも、少しだけ酔いが回ったのかも。

「いつまでも、ただまとわりついてる幼なじみみたいに思われたくないんだもん。就職して、ようやく同じ立場まで追いついたのに。仕事の邪魔なんてできないよ」

ただの幼なじみになら言えるワガママも、恋人にはうまく言えない。大事に隠していた想いを引っ張り出して、付き合ってもらえることになったけれど。

これまでのデートは、ホームグラウンドじゃなかったから観光気分が大きくて、付き合っている実感がどこか薄かった。

だから、出張が終わると聞いたときは素直に喜んだ。これでようやく日常のなかで、付き合っていることを噛みしめられると思ったからだ。それが、まさか近くにいるのになかなか会えない日々が続くなんて。

「ゲロ甘なこと言ってんなよなぁ、健気なんてお前のキャラじゃないってぇの」
「……うるさいな、ゲロ甘って。私がそういうの言っちゃ悪い?」

ギロリと睨む私の顔をみた颯哉はぷぷぷっと、口から妙な音を漏らした。

「だってよ、お前が兄貴と付き合ってるのかと思うと何か笑えるわ、やっぱ。兄貴ももの好きだよな」

ガツンと、頭の天辺に痛いヤツが降ってきた。

私と潤哉さんが付き合うのって、そんなにありえない組み合わせかな? 

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