いつか、その日を青春と呼ぶのだろう
幕間
そこまで読んで、私は一度、顔を上げた。
目の前のベッドでは、小さな寝息をたてている彼の姿がある。
病室には、彼の寝息の音だけが、穏やかに響く。
そっと、ほおに手を伸ばそうとして、やめた。
せっかく寝たんだ。
起こしたら、かわいそうだ。
彼は、1日の中で私と話した一言を、まるで日記のように書き残していた。
日記の中の学生の頃の私たち。
今は戻れない、輝いていた時間。
無知で世間知らずな、幼いふたり。
世界で私たちだけしか知らない、あの瞬間。
彼は、それをあたかもスクラップブックのように、切り取って、大切に記していた。
そういう部分は、ロマンチストというか、なんというか。
そのまま少しの間、私は彼の寝顔を眺めていた。
あの頃とはだいぶ変わってしまったけれども。
日記をつけていた彼と同じように。
少しでも、記憶に残したかった。
「しーくんが寝たら、つまらないな・・・」
そして、私は、もう一度読み始める。