タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

「おーい、きみ。ここからじゃ足っぽいのしか見えないから、顔見せてよ」


見るからに毛ものなんだよね。

とても触り心地がよさそうな毛並みに密かに胸を躍らせる。


「ウタちゃん、あゆなんが困ってるわよ」


そう発した人は正気に戻ったのか比較的明るい声でいた。


まだ私の足元でチラつく白い毛もの。

足がパタパタと足踏みしている様子に思わず声が漏れた。



「やばい、可愛すぎるっ」

「か、かわいいっていうなっ!」


ひょこっと出てきた顔に私は自然と笑いかけた。


とても可愛らしいウサギだった。
チェック柄のベストを身につけて、蝶ネクタイを付けている。


強気な言葉は表情と一致していなくて、今にも涙がこぼれそう。


「君、男の子でしょ?泣かないの」


そう言って目線を合わせ、頭と思われる場所に手を乗せた。2回その場で跳ねさせる。


ウタちゃんは恥ずかしがっているのか俯いて、キュッと口元を引き締めた。



その様子に胸を高鳴らせたのは言うまでもない。



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