タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「その弟についてで私はウタちゃんに、」
「ウタくんやろう!!」
「ふぇ!?」
小さな手を包んでそう言う私はきっとみっともない顔をしているのだろう。
でも今はそんなことよりウタくんが弟になるということにしか頭になかった。
これは逃しちゃいけないと勝手に脳が指示する。
「ウタくん、やろ!?」
「で、でもぼく、……やだよっ」
「なんでよー。絶対カッコよくなると思うんだけどな~」
あえてわざと気分を乗らせるようなことを言ってみた。
ごめんねウタくん。
これしか浮かばなかったんだ。
群青色の大きな目がだんだんと輝いていくのを私は見逃さなかった。
「ほ、ほんとに?ぼく人間になったらカッコよくなる!?」
どうやらウタくんはカッコ良くなりたいらしい。
かわいい夢だなと思った。
もちろん笑わない。
だってこんなにも真剣で希望が満ちた表情をしているのだから。
「カッコよくなるよ絶対!」
一緒にガッツポーズをとるとパアっと目が大きくなってその場で跳ねるウタくん。
出てきそうな言葉を頑張って飲み込む。
ゼテルアさんを見ると私と同じ気持ちでいたのか口元を押さえて必死だった。