タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

翌日、遅刻せずにHRまで余裕の時間に着いた私は窓側の席に座って外を眺める。


元いた(倉村亜優奈)の席から2つ席を空けたところに(佐來あゆな)は座っている。


ほっとしていることは確かなんだ。


幸太郎の隣にならなくてよかったって。


でも右を向けば嫌でも見えてしまう。


いつもギリギリに来る人だからまだそこにはいない。


そして、もう1人。


もうそろそろ来るはずなんだけど、未だに見ない歩未の姿。


最も会いたい人なのに。


このまま不登校にでもなったらどうしよう……。


今すぐにでも歩未ん家に寄りたいけど、この姿じゃ絶対にあやしまれる。


んー、どうしたもんかねぇ。


人差し指を眉間に置いて考え込む。


チャイムが鳴る1分前に「セーーフ!」と陽気な声が聞こえて反射的にそちらへ振り向いた。


ムードメーカー的な存在の幸太郎は何人かの男子に話しかけられて笑い合う。

それから自分の席へ着いた。


シャツをつまんで風を取り入れる様子に不覚にもドキッと胸が高鳴る。


つい見惚れて、見すぎたせいか幸太郎が私を見た。


『やばい』と思った時には遅くて、ずっと見ていたことを悟られないように笑ってみた。


「あ、おはよう佐來さん」

「……おはよう、ございます」


慣れない笑顔と接し方に戸惑いながら挨拶をした。



嬉しいはずなのに、胸が、苦しかった。



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