タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

「どうかしたの?」


不意に聞こえてきた声に我に返る。


私に話しかけてきたのは前の席の田中さんだった。


田中陽葵(たなかひまり)
生きていた時に何度か話したことある女の子。


名前とは正反対でとても大人っぽい。

よく1人で過ごしているのも見かけた。
けど友達が少ないようにもみえなくて、成績優秀だし、男女問わず信頼されているんだよね。

そんな彼女に密かだけど尊敬していた。

私ひとり行動苦手だから。

それと何となく、歩未と似てる気がしたから。



私は「なんでもないよ」と首を振った。



「そう。……ここには慣れた?」

「う、ん。まあ少しかな」


少し驚きながらも小さな嘘をついて答える。


「ま、1か月経てば慣れると思うから。分かんないとこあったら聞いて」

「うん、ありがとう。田中さん」

「いいよ」


そう言って笑った田中さん。

はじめて笑った顔を見た気がした。とても可愛いかった。それも名前みたく。


一緒に笑っていると途中で小さく声を上げた彼女の目線を追った。



< 112 / 277 >

この作品をシェア

pagetop