タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「どうかしたの?」
不意に聞こえてきた声に我に返る。
私に話しかけてきたのは前の席の田中さんだった。
田中陽葵。
生きていた時に何度か話したことある女の子。
名前とは正反対でとても大人っぽい。
よく1人で過ごしているのも見かけた。
けど友達が少ないようにもみえなくて、成績優秀だし、男女問わず信頼されているんだよね。
そんな彼女に密かだけど尊敬していた。
私ひとり行動苦手だから。
それと何となく、歩未と似てる気がしたから。
私は「なんでもないよ」と首を振った。
「そう。……ここには慣れた?」
「う、ん。まあ少しかな」
少し驚きながらも小さな嘘をついて答える。
「ま、1か月経てば慣れると思うから。分かんないとこあったら聞いて」
「うん、ありがとう。田中さん」
「いいよ」
そう言って笑った田中さん。
はじめて笑った顔を見た気がした。とても可愛いかった。それも名前みたく。
一緒に笑っていると途中で小さく声を上げた彼女の目線を追った。