タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「おら、こっち向けよ」
「っ……い、や」
「ほんっとわかんねー女だなあ!」
無理矢理顔を正面に向けられ、血走った目が私を捉えて黒く光る。
来て早々ついてないよ……っ。
私はこんなことするために来たんじゃないのにっ。
大切な人に伝えるために来たのにっ、なんで……こうなるの!
「だれかっ助けて!
だれかたすけ、ンンっ──!」
口に何か入れられ言葉が発せなくなった。
手はまだ肌を撫で続けられていて、私はただされるがままだ。
一人の名前を呼び続ける。
絶対来ないって分かってる。それでも私は一生懸命その名前を叫び続ける。
鈍く錆びついた音が耳に入ったのは、男の手が胸に伸びてきたときだった。
「おい!なにやって……!」
一人の男の子がそう叫んで、次に聞こえたのは女の子の声だった。
その二つの声に私は、涙した。