タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
静かに放たれた言葉に顔を向けるとゼテルアさんがドアに寄りかかって私を見ていた。
その顔は呆れているようだ。
近くにきたゼテルアさんを私は見上げる。
「そう思うのなら中断しましょう。その方が断然ラクよ」
「…………」
「嫌なんでしょう?こんな辛い思いしたくないんでしょう?だったら終わらせていいのよ。その判断はあなたが決めることなんだから」
ゼテルアさんはそう言うと懐から紙(和紙に近い肌触りの紙)と羽根ペンを取り出して私に差し出す。
じっと見ているとベッドの上に置かれた。
紙には〝中断契約書〟と大きく上の方に書かれてあって、その下には、年月日と氏名記入欄がある。
……これを書けば終わらせられるんだ。
紙の一番下には小さな文字で注意事項が書かれてあった。
どうやら、これを書き終えたと同時に姿は元通りになって記憶は全てリセットされてしまうらしい。
歩未、幸太郎、私と関わった人の記憶も。全て。それは自分の記憶からも。
心做しか寂しくなった。
でも、こんなに辛くなるのだったらもう終わらせてもいい。
歩未だって、幸太郎だって私がいなくても十分楽しそうだったから。