タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「知ったようなこと言わ、」
「辛い思いしてるのはあなただけじゃない。ここにきた者みな様々な思いを抱えて解決していってるの」
私の手から羽根ペンを抜き取りながらそう言う。
その声は厳しかったけど、スッと心に響いて意思に反した涙が頬を伝った。
なによ……。
私のこと知らないくせに……っ。
なんで取り上げるの。
決めるのはあなた次第って言ってたじゃん。
「辛いことは重々理解してるつもり。ずっと見ているから。でもね、それを乗り越えるのはあなたしかいないの。死者はそうやって逝く道を自分で切り進んで乗り越えていくのだから」
力強い視線が私を捉える。私も見つめ返した。
目の前は完全にボヤけているけど、私はその視線から逸らさない。
ゼテルアさんの言っていることはすべて正論だと思ったから。
『辛い思いをしているのはあなただけじゃない』
『死者はそうやって逝く道を自分できり進んで乗り越えていくんだ』
この言葉が脳内で繰り返される。
自分に刻み込むように、言い聞かせるように。
……そうだよね。
私以外にもたくさんの人が課題を解決させに行って逝くことが出来てる。
私ってば、自分のことしか考えていなかった。
辛いのは私だけだって。
そもそも私は幸太郎に想いを告げるために姿を変えたんだ。
ただそれを成し遂げることだけを考えればいいことだった。
こんな醜い思いばかり抱えて終わらせるだなんてどうかしてた。