タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
6.危険な予感
佐來あゆなとして転入してから2週目に突入した。
だんだんと夏らしくなってきた中、今日も学校な私は、いつものようにゼテルアさんに見送られ、狭い路地裏からスタートした。
少し歩けば甘い香りが鼻をくすぐって、
道路沿いを歩けば車が走り出す音や匂いを感じる。
この『感じる』がやっぱり私にとって一番嬉しくなる。
そして、中学校を左に曲がって必ず聞こえてくる私のかけがえのない親友の声。
「あゆなちゃん」
後ろを振り向けばそこには笑顔な歩未が手を振っている。
あの日から急激に距離が縮まったんじゃないかなと思う。
歩未はどう思ってるか知らないけど。
それでも、こうしてまた友達になれたことにとても嬉しさが込み上げてくる。
顔がにやけちゃうくらい。
「あゆなちゃん、なんかいい事でもあった?」
「へ?」
「すごく嬉しそうな顔してたから」
「……嬉しそうな、かお……?」
気持ち悪い顔、じゃなくて?
すごく嬉しそうな顔?!
ああ、そっか。私の顔違うんだった。
今の笑い方だったら絶対『なに変な顔してんの。気持ちわるいよ』って言うのに。
歩未のことだから、キツい一言+余計な一言を言いかねない。
「うん、とっても」
「変な顔じゃなくて?」
そう聞いてみると、キョトンと目を丸くした。それから笑う。クシャッと目が線になるくらいに。
「あゆなちゃんに限って変な顔なんて有り得ないからっ……くふふ。まぁ……」
言葉を詰まらせる歩未は、苦い顔を浮かべていた。
首を傾げて「どうかしたの?」って聞いてみると「ううん。何でもない」そう笑うからそれ以上は聞かなかった。
いや、これ以上は踏み込んではいけないと思ったから。
歩未、無理してる笑い方だった。
それに、毛先を弄ってた。
誤魔化すときの癖だよ、それ。
だから、聞けなかった。
だいぶ、しんみりしてしまったから話題を変えるため「もうすぐ夏休みだね!」と切り出した。