タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

「……失礼します」


そう一言、気分の乗らない声で言ってから、木村先生を見つけて近寄った。


「やっと来たな。俺は転入生だからって容赦しないんだ。よく覚えとけよ」

「はい、すみませんでした……」


口では謝るものの、内心は──。



木村め!
完璧にセットされてるその髪!
ボサボサにしてしまいたい!
あれっぽっちで呼び出すのアンタくらいだかんね?

イケおじとか一部の生徒間で言われてるみたいだけどさ?
ちょ、調子乗るなよ!

……まぁ、分からなくもないけど。

そうじゃなくて!

私は認めん!もうすぐ50になるただのおじさんだ!そうだ!木村はオジサンなんだ!!


と、いくらでも言いたい放題だ。


半ば息切れ気味で呼吸が荒くなっているのに気付きながら

目の前で何かを言っている木村をただ眺める。


職員室はたくさんの資料で溢れてて、こんな量を先生達は1人でこなしていっているのかな。


すごいなぁ。

この先生も、そうなんだよね。

いま机に広がっている資料をみて思う。


やっぱ大人ってすごいなぁ。

私は、どうかな。


きっと1人じゃ出来なさそう。


そもそも大人にはなれないんだけどね。

でも1人でたくさんの量をこなしていく大人ってカッコイイな。





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