タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

「キム先ー!終わったー」


職員室に顔を出すと、パソコンと向き合っていた木村が椅子ごとくるりと振り返った。


「早かったな。はい、お疲れさん」


歩み寄って差し出された袋を2人で凝視した。

袋には缶ジュースが2つ。


「いいんですか?」

「……ついでだ」


そう言う木村は少し子供っぽく目を逸らすから、笑ってしまいそう。


いいとこあんじゃん?

少し見直したかも。少しね。


「キム先〜いいとこあるじゃん!俺ちょうど喉乾いてたんだよ。助かる〜」

「言っとくが、今回だけだからな。もう帰れ」


最後は投げやりに言われ、私たちは揃って廊下に出された。


席に戻っていく背中をみて、笑うとその隣で幸太郎が「キム先いいよな〜」なんて呟くから、それに頷いた。


こんなに厳しくするのは木村先生の生徒に対する愛情ってことなのかな。


でも、やっぱり度を超えすぎるのは良くないから、これからはソフトにしてくださいね。


アメとムチのバランスが、生徒の心を掴む秘訣だよ、キム先。



「帰ろっか」

「うん」


少し見下ろして言う幸太郎に私は少し見上げて頷く。


なんかムカつくけど、仕方なく隣についた。


顔が熱くなったのは、気のせいにしておこう。


いつもと違う角度でみる幸太郎に不覚にもかっこいいって思ってしまっただなんて、認めたくないから。



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