タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
あと、もう少し。
ケーキ屋さんはもうすぐそこまで見えてる。
その小さな路地を左に曲がり入る。
それなのに、それ以上踏み出すことが出来なくなってしまった。
見えない汗が噴き出る。
目は見開きっぱなしで、頭は混乱するばかり。
もう一度呼ばれる声にぎこちなく振り向いた。
学ランのトップのホックは外されていて1年生のくせにかなり着こなしている感を醸し出す彼。
向けられる目はアイツとは違くてほんの少し鋭い。
でも、笑い方は幸太郎と一緒だ。
私は、なんとか平常心を保ちながら近づいて言った。
「新太くんどうしたの?」
「……」
黙ったまま私の目を見つめてくる彼を私は咄嗟に外した。
え、なに。
新太こわい。
きらりと光ってみえるその瞳に息を飲んだ。