タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

「ねえ、なんで私にそんなこと聞くの?」


ふと気付けばそんなことを言っていて、それに驚くことはしなかった。


それなのに手汗を握ってる。


もう、これ以上の言葉聞きたくない。


「俺ね、信じてもらえないかもしれないんだけど。そーゆーの分かるんだ」

「……」

「なんか見えちゃうんだよね、俺の目」


新太は自分の目元を指して困ったように笑った。


「それでさ、さっきからチラチラ見えて仕方なくて後を付いてきちゃったんだ。家ってあの坂の上だって兄ちゃんから聞いたけど……」


これまた不思議そうにじっと見られて、どきっとさせる。

見えるって、アレだよね。

〝霊感〟ってやつ。


それとももっと別な能力?


っ、いや、今はそんなことより!


「これから買い物、するんだよ」

「そうなの?……でもそっち行き止まりだけど」


あ、……。

彼が指した方をみる。


レンガ調の壁が。

私の住む世界の入口があった。


……ぜテルアさん、どうしよう。

私、ここで終わっちゃう。


その向こうにメッセージを送った。

私の声届くかな。


「ねえ、本当は亜優奈でしょ?さっき見えたんだ亜優奈の姿がっ」


私の腕をしっかり両手で掴まれ、振られされる。

私は何も言えない。

ただ目の前で希望をのぞかせる瞳をみた。


ごめん新太。
それ以上は言えないし、言っちゃいけないんだ。

私だって主張したいよ。
大声で『ここにいるよ!』って言いたい。


でも、私はこの世に存在してないんだ。

この姿は借り物なわけで。


そんな、哀しそうな目で見られても困るよ。



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