タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

「この目は本当なんだ、ちゃんとこの目で亜優奈を見た!」

「ちがうよ」

「違くないっ佐來さんの中にいるんだ、亜優奈が!」


こんな必死になってる彼をはじめて見た。


心がどうしても揺らいでしまう。

でも、約束は約束。
だって私は幸太郎に何としてでも伝えないといけない想いがあるんだから。


そっと彼の手を下ろした。


ごめん、新太。少し傷つけるよ。



「新太くん。それは見間違いだと思うよ。たぶん新太くんがその事実を認めたくなくて、幻を見ちゃってるんじゃないかな?それとね、」


歯を食いしばる姿に胸が締めつけられる。

それでもこれだけは譲れない。

お願い、わかって。



「名前が一緒だから、そう見えてしまってるのかもしれないよ?ごめんね、私が〝亜優奈〟って子じゃなくて」


俯く彼にそう告げる。

震えているのは泣いているのだろうか。


私は幸せだな~、だなんて思うところじゃないんだけど、それでもやっぱり嬉しい。



「その子のこと好きなの?」


なんとなく聞いてみた。

それが、まさかの頷きに顔が火照る。



え、なに新太私のこと好きだったの?!
エエ!?



「姉ちゃん的存在で」


少し鼻声な新太に頷いた。


あ……なるほど。姉ちゃんね。


よし、帰ったら自分を戒めよっか。



「でも、俺は信じる。なんでその姿で亜優奈がここにいるのか分からないけど、俺は自分を信じるから」


真っ直ぐ目を見つめながらそう言う。


はぁ。全くどこまでもしぶといなあ。

でも、そんなところ幸太郎に似てるよね。


もう、勝手にしてたらいいよ。



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