タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
頑張って笑いを止めてると、背後から微かに声が聞こえた。
振り向くとゼテルアさんをはじめ、和人さん、ウタくんの顔がこわばっていた。
ゼテルアさんはその表情プラス手が顔の前で高速で横に振られていて、あまりの速さにまた笑い転げそうになったけど、次に顔をこわばらせたのは私だった。
変な汗が止まらない。
黙る電話の向こう。
気を付けていたはずなのに、素の自分が出てきてしまったようだ。
だから、みんなあんな顔を。
《あゆなちゃん》
「っ、ハイ!」
動揺しすぎた。声が裏返ってしまった。
何言われるかヒヤヒヤさせて言葉を待つも、歩未はまったく違う話題を出してきた。
《この話はやめよう。怖いから、もう鳥肌やばいからっ。でさ、8月6日って空いてる?》
これを話すために電話したんだよ~、と思い出したように声を弾ませて、深く息を吐いて言った歩未。
相当堪えたんだな、ごめんね?歩未。
ホラーネタに救われた私はそっと微笑んでカレンダーを見た。
私の部屋ってだいぶ賑やかになったと思う。当初に比べたら。
ベッドと小さな丸テーブルしか無かったこの部屋は、後から勉強机に、本棚、洋服タンス、テレビといろいろ。
過ごすのには充分な品が揃っていた。
部屋の成長に感心しつつ、8月のカレンダーをめくって確認する。
日曜日だった。
当然何も予定のない私は、即答。
「空いてるよ!」
《よかった~。その日さ花火大会あるんだ。行かない?》
「行く!行きたい!」
《よし、決まり!》
鼻歌交じりに声を弾ませる歩未はとても楽しそう。
私も楽しいし、嬉しい。
カレンダーにもう一度目を通して6の所に丸を書き込んで〝歩未と花火大会〟とメモをした。
電話の向こうでもガサガサと音がするからスケジュール帳に書き込んでいるんだろう。
それもルンルンに。
そうだよね。去年行けなかったんだから。私が風邪をこじらせてしまったせいで。
なんか妬けちゃう。
私と行くけど、本当の私と行くわけじゃないって思うとなんか。
って、なに自分で自分に妬いてるんだろ。
やだなぁ、自分に嫉妬だなんて。
まぁ、それくらい歩未が大好きってことなんだろうけど。