タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
《夏祭り、浴衣着てく?》
「ゆ、かた……」
歩未の声とは裏腹に、私の声のトーンが下がってしまったのは、
「歩未ちゃんどうしよ、持ってないよ浴衣」
持っていないことに気付いたから。
そっか、……夏祭りだもんね。浴衣着ていきたいよね。
なんか申し訳ないと思ってしまった。
私がもし持ってるって言っていたら絶対声が弾んでいるはずなんだ。
電話の向こうが静かすぎる。
たぶん落ち込んでいるのかも。いや、呆れているのかもしれない。
でも、歩未はそんなことで気を弱くする娘じゃないよね?
そう信じてるけど、やけにこの静けさが緊張させる。
歩未の声が聞こえたのは、手に汗を握り始めたときだった。
《あ、ごめん!ちょっと日にち確認してた。えっと、持ってないんだよね、じゃあさ、明日買いに行かない?》
予想外な言葉に口が半開きした。
ほんとにいい子だと心の底から思い、感謝した。
でもちょっと違和感。
……歩未ってこんな優しかったっけ?
いや、優しいことには変わりないんだけどっ。
やっぱり、〝親友〟と〝友達〟との差っていうのかな?
まだまだなのかな。親友という頂点まで登りきるのは。
親友まで辿り着くのってこんなにも難しいことだったんだね。
初めて知ったよ、歩未。
《──あゆなちゃん?》