タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「浜仲っ」
病院のロビーに着くと松崎がソファから飛び出てきた。
言葉は交わすことなく手首を掴まれそのまま足早に離れ、とある個室の前に行き着いた。
「……」
「……」
ふたりして扉を眺める。
久しぶりに来たこの場所にふと涙が出そうになった。
「……毎日通ってるのここ」
「まーね」
「すごいね」
素直にその言葉を漏らすと、目を見開かれた。
そんな不意をつかれたみたいな顔しないでよ。
気まずい。
きもちわるくてすみませんね!
「だから、そんな顔しないでくれる!?ほんっとムカつく」
「は?なに急に。いいだろ別にどんな顔したって」
「ふん。てか、この手いつまで掴んでるつもり?」
そう指さすと、すぐに離された。
それでも、まだ熱は帯びていて、何となく気恥ずかしくなった。
「……入るか」
その一言で緊張が増した。
なぜここに私が呼ばれたのか、分からない。
電車に乗ってても、走ってても、考えても考えても……わからない。
でも、松崎が私にメッセージを送ってくることはなにか起こったってことだ。
私が取り乱している時に掛けてくれた言葉を私は憶えてる。
『これから亜優奈になんかあったら、必ず連絡入れるから。浜仲は待ってて。大丈夫、アイツなら何が何でも戻ってくるから。信じよう』
それをちゃんと守ってくれてた。
今ほんの少し、見直した。
松崎がゆっくりドアを開けると、電子音がリズム良く鳴り響いて、それだけで体全体の力が抜けそうになる。
それでも、一歩一歩慎重に、前に進んで、静かに眠っている人物をみて微笑んだ。
「亜優奈、来たよ」