タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
病院を出て、お互い言葉を交わすことなく一定の距離を保ったまま、帰路を歩く。
程なくして、地元の最寄り駅に着いた私たちは、例の横断歩道に差し掛かった。
行きもここを通ってきた。
もう、怖くない。
それは紛れもなくあゆなちゃんのお陰だ。
だからそのまま遠回りもせず真っ直ぐ歩き進んで行こうとした。だけど、何となく隣の様子に違和感をもった。
「松崎」
そう呼んでしまったのは彼が苦しそうにみえたから。
いや、苦しいんだ。以前の私と同じように。
だけど、人は乗り越えないと何も前に進めない。
誰にだって一人で簡単に乗り越えられる高い壁はない。
たとえ、簡単に跨ぐことの出来るコンクリートの塊であっても。
それに気付かさせてくれる一言があれば、つまづくことなく、回避できる。
だから、今度は私がアンタを助けてあげる。
なんだかんだいって、私を支えてくれてたし。
不本意だけど、とても助かってるんだよ。
「え、ちょっ、浜仲!?」
「……大丈夫。行くよ」
そう言って私は松崎の手を取った。
自分でも驚いてる。男子の手を自ら握って先頭をきって歩いてるなんて。
でも、これでいいんだと思えたのは微かに聞こえた「ありがとう」の声だった。