タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「で、6日は空いてるの」
ひとりギャアギャア喚く松崎に、真顔でもう一度聞く。
内心ご満悦な私を睨む彼はやっぱり痛そうに顔を歪ませていた。
なにかブツブツ言ってから「特に何も無い」と言い切ると私は小さく拳を握った。
第一関門達成……!
ほっとしたのも束の間で、含み笑いをした松崎が私に反撃してきた。
「なに、俺を誘ってんの?」
……ムッかつく。
男子の平均身長より低い松崎だけど、見下ろされているからわけのわからない敗北感に駆られた。
手にまた違う感情を込めて拳を作った。
「言っとくけど、私からの誘いじゃ〝ない〟から」
顔を見ずにそう告げると、間抜けた声を上げた。
はぁ、なんだか家がまだ遠くにあるように思えてきた。
一際目立つ青い屋根をみてそんなことを思う。
「な、なあ、それってさ……」
「ちょっと、気安く触れるな!」
「あ、わり。……でもさ、それって、もしかしなくてももしかする感じ?」
肩を掴まれたまま、そう問いかける松崎はどこか困っているようにみえた。
「……そんなの知らないよ。本人に聞いてみればいいじゃん」
「……」
黙ってしまう彼はきっと1人の女の子を思い浮かべているのだろう。
亜優奈と松崎。
2人は腐れ縁なんだとか。
幼なじみ並に近い存在なんだとこちら側からみれば一目瞭然だ。
よく喧嘩するし、何事もなかったように笑い合ってるし。
それなのに2人は曖昧な関係でいるのが不思議だった。
それぞれから相談を受けていたから尚更だ。
何度も『早くくっつけよ』なんて思ってた。
亜優奈は、松崎に告白すると決めていたけど、彼はどうなんだろうか。