タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

そんな時だった。

握っていた手に小さな反応を感じたのは。


亜優奈を呼ぶとまたその反応をみせた。


植物状態は脳死とは異なって、生きているし、この通り眠っているだけ。
人工呼吸器も付けないでいられる。
意識はごく稀に回復することがあると、亜優奈の母ちゃん伝てに聞いた。


もしかして、意識が、戻った!?


俺はナースコールを押した。

しばらく待つとパタパタと足音が聞こえ、主治医の松本先生が入ってきた。


亜優奈の意識が戻ったのかもしれない、と早速状態を確認している先生の背中に向かって告げた。


「んー、まだ完全とは言いきれないかな。でも、いい傾向に向かっているかもしれない。もう少し様子をみましょう」


微笑む先生に胸をなでおろした。

そして去っていく後ろ姿に頭を下げた。


そうだ、浜仲に連絡だ。


あいつが一番心配しているはずだから。
親友だもんな。


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