タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
ごめんと言って取り出したのは幸太郎だ。
スマホを耳に当てる彼を私は眺めていた。
だから表情一つひとつに異変を感じたのは瞬きするよりも早かった。
電話はほんの一瞬で彼から発する言葉は「分かった」と切るときだけのみだった。
どうかしたの?と声を掛けるよりも先に彼は走り出そうとした。
「待って」
咄嗟に彼を呼び止める。
浴衣の袖をしっかり、両手で、掴んでいないとあっという間に行っちゃいそうだ。
「松崎くん待って私、」
「ごめん佐來さんまた今度でいい?」
「今度じゃだめ!」
自分でもびっくりするくらい大きな声。
静かな場所に私の声だけが響く。
恥ずかしさはきっと後から襲うのだろうか。
今はそんなこと1ミリも思っていられない。
今度なんて私には無いんだから。
「今度じゃだめなの。今じゃないと」
「俺も今すぐ行かないと」
私の手を引き剥がそうとする彼。
私は負けじと力強く引き留める。
握力が弱すぎて指圧もだんだんと緩んできた。
なんて力。
これじゃもう持たない。
というか!
話くらい聞いてくれてもいいじゃん!
なんで人がこれから頑張ろうとしてるのに私を無視して行こうとするわけ!?
雰囲気的に分かってたんじゃないの!?
幸太郎ってそんな勝手だったけ??
あーーーーーームカつく!!!!
「好きって言わせてよ!!このバカ!!!!」