タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「ハア、ハア……っ」
走れるところまで走った。
どこまで走ってきたのか辺りを見渡して確認できたのは総合病院だった。
案外近い距離にあるんだなと頭の隅に思う。
そして直感的に、あそこに『私』がいる、と。
それでも興味は湧かなかった。
背を向けて緩やかな坂道を下りる。
次に見えたのはコンビニだ。
幸太郎の好きな人を歩未だと勝手に思ったあの日が懐かしい。
真実を知った今は自然と顔がふやけてしまう。
本当は両想いだった私たち。
あーあ。
あんな事さえ起きなかったら
今頃私たちは付き合っていたのかなぁ。
……ははっ。
そうだったらいいなぁ。
喧嘩しててもいいからもっとずっと幸太郎のそばに居たかったなぁー……。
視界がぼやけては流れ落ちて
拭っては溢れ出てくる涙はとてもしょっぱい。
神社から走ってきたはずの私の足は意外にも疲れてはいなかった。
それは私が死んでいるからなのか否か。
分からない。
私は本当に死んだの?
ねえ、ゼテルアさん。
空を見上げる。
星が綺麗だった。
声はまったく聞こえなかった。
前までは小さな問いかけにも応じてくれてたのにピタリと音信不通になってしまったみたい。
「もう終わりが近付いてきたのかな」
なんとなくそう思い、
なんとなく頬を撫でる風が私の問いに応えてくれた気がした。