タイムリミットは君にサヨナラをするまで。
「さ、あーちゃんもうそろそろ行きましょうか」
そう切り出したおばあちゃんが私の手を取って歩き出す。
私は遂にこのときが来たかと何故かワクワクしていた。
さっきまでクヨクヨしていたのに。
不思議だった。
ほんの少し名残惜しさがあるのに天国へ行くことがこんなにも心が弾んでいるなんて。
その様子に気付いたのかおばあちゃんは少し困ったように笑った。
「あーちゃん楽しそうね」
「なんかね。これからおばあちゃんと一緒に過ごせると思ってるからか分からないんだけど今にも踊りだしちゃいそうなくらいワクワクしてる!」
「天国なんてそんなもんじゃないわよ?」
「そうなの?ワクワク通り越して考えられないくらいフワフワしちゃう感じ?……それとも、怖かったりする??」
「ふふっ。怖くない怖くない。けど……」
立ち止まったおばあちゃんに続いて目の前に現れた扉に小さく声を上げたのは
私が見た中で一番小さい扉だったからだ。
小さいといっても普通サイズの家に貼り付けられているドアと同じ大きさ。
この先が天国?
と思いつつおばあちゃんを見て首を傾げる。
するとおばあちゃんの手から光るものが見えた。
聞かなくても分かったのは一度見たことのある物だったから。
バッジだ。
天国へ行くのに必要なアイテム。
私はその為に課題を成し遂げに行っていたのだから。
なのに、おばあちゃんはこう言った。
「ごめんなさい。これはまだあげられないの」