タイムリミットは君にサヨナラをするまで。


生きているこの奇跡に私はどれほどの感謝をすればいいのだろう。

おばあちゃんに会っていなかったら私はここに存在していなかった。

それは偶然なのか必然なのか。


この現象を臨死体験と呼ぶみたい。


誰しもが体験できるわけではない。

だから奇跡なんだ。



──私の人生に続きを与えてくれてありがとうございます。


そう心から思う。


ふわりと頬を撫でる風。
夕陽のあたたかな光。
彼の笑った顔。

そんな穏やかな景色がこれから続いていくんだと胸に抱く。



病室に着き、私がベッドに入ると幸太郎が あっ、と声をもらした。

どうかしたのか聞くよりも早く私の名前を呼ぶ。


いつになく真剣な瞳がぎこちなく揺れた。
そこに緊張が走る。



< 273 / 277 >

この作品をシェア

pagetop