タイムリミットは君にサヨナラをするまで。

自分から彼に抱き着くなんて今までで一番有り得ないことだと思っていた。


まさか幸太郎とこんな日が来ることも思ってもみなかった。


彼の腕の中はとても温かくて、心臓の音がうるさかった。



「ドキドキしてる?」

意地悪く聞いてみると髪を撫でてくれていた手が一瞬ピタリと止まって再び撫でる。


返事待ちをしていると上からため息が降ってくる。



「あのさぁ、あんまこーゆーことしない方が身のためなんじゃないの?」

「なんで。いいじゃん心地良いんだから」

「はぁ……ほんと可愛いことすんなよなもう」

「え、なんて?」


聞き取れなかった言葉を聞き出そうと体を離すと幸太郎はあっという間に距離を置いた。


ちょっと、なんでそんな早く遠ざかるの。


扉口へ足を進める彼の背中。
名残惜しさに引き留めようとするけどまた会えるんだからと自分に唱える。


それでも嬉しすぎて言いそびれた返事を扉を開きかける彼に告げた。



これからもよろしく! と。




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